博士の愛した数式/小川洋子【あらすじ・レビュー】

シェアする

2006年に映画化もされている、小川洋子さんの作品。

普段ミステリーやホラーを多く読んでいて、こういうヒューマンドラマというか、泣ける暖かいストーリーって読まないんですけど。

「読み終わった時に自然と涙が溢れてくる」とはまさにこのことか。そんな小説でした。

あらすじから感想など紹介します。

スポンサーリンク
336

博士の愛した数式のあらすじ

主人公は、シングルマザーとして小学生の子供を育てながら、家政婦として働く「私」。

ある日私は、何にもの家政婦がお払い箱になった厄介なお客様を担当することになりました。そのお客様は数学の博士。なんと、博士の記憶は80分しか持たないのでした。そんな博士と私と、私の息子「ルート」の3人が過ごす、かけがえのない日々。

これが「博士の愛した数式」の、ざっくりとしたあらすじです。

私の息子は小学生5年生の10歳。「ルート」というあだ名は、博士につけてもらいました。頭が平らなのが『√』に似ているから、というなんとも数学博士らしい理由で。

最初は記憶が80分しか持たない博士に戸惑っていた私ですが、ルートを交えて3人の関係は大きく変わっていきます。

もう、とにかくルートがすごくいい子で泣けるんです…!

というのは、このあと詳しくお話します。

博士の愛した数式のおすすめポイント

愛おしい登場人物たち

この作品には、ほとんど私・博士・ルートの3人しか登場しません。でも、この3人のキャラがとにかくいいんです。

小説を読んでいて、1つの作品のなかだと、好きになれるキャラって意外と1人か2人しか見つからないのが常ですよね。でもこの3人のことは全員大好きでした。

博士の魅力

博士は、とにかく数学を愛しています。「誕生日は何月何日?」「足のサイズは?」というように、コミュニケーションも数字を通して行うほど。

相手と話すことに困ったときほど、自分の得意な数字の話をするんです。

そして、身につけている服にはたくさんのメモが貼ってあります。記憶が80分しか持たないので、大事なことは書き留めておくんです。

映画「私の頭の中の消しゴム」を思い出します(あれはアルツハイマーでしたっけ)。

このメモ用紙が、博士の心を表したりもします。

数学の学者だけあってとにかく頭がいいのですが、好き嫌いがあったり、怖がりだったり、ぶっきらぼうだったり。どこか可愛らしい素敵な人です。

そして私が1番好きなところは、子どもに対する接し方がとにかく素晴らしいところ。「そうだ、子どもってこう扱われるべきなんだ」と感心・驚嘆してしまうほどでした。

ルートの魅力

ルートは、そんな博士の子どもへの想いを全身で受け止める役目を果たしています。博士はとにかく全ての子どもが大切で、大人よりも十二分に大事にしなきゃならないと考えているんです。

ルートは最初、その愛情の大きさに戸惑いますが、博士の期待に応えようと一生懸命。シングルマザーの私に育てられたからか、すごく物分かりのいい子なんです。それがまた愛おしくていじらしい。

そのうちルートも博士を好きになり、2人は一緒に数学を勉強し、夕食を食べる仲になります。

ルートは、お母さんである私と博士の間で、3人の生活を明るく優しく楽しいものにしてくれます。

私の魅力

語り手である私は、この2人と比べると一見平凡で優れたところはないです。夫と離婚したシングルマザー、得意な家事を仕事にした家政婦。

だからこそ、読者の気持ちを代弁する役割も担っています。

私は博士が出す数学の問題に何度か苦戦しますが、私も一緒に解いて苦しんでいました(笑)

女性が読んだほうが、より共感しやすいかもしれません。

余白で泣ける小説

この小説は物事や登場人物の心情について、あまり多く語りません。

読み手に自然と想像させて、自然と泣かせるところがたくさん詰まっています。

だから胸の深いところに迫ってくる悲しさや、切なさがあります。

薄っぺらいヒューマン・ドラマなどどはわけがちがいます。ありきたりな話では泣けない人ほどおすすめです。想像力がある人ほど、たぶん読んでいて辛くなります。

博士の愛した数式の感想

疲れた時におすすめの癒し系小説

これを読んだ時の私は、正直仕事で相当疲れてました。

でもこの本を読んでいる間は、自分も博士たち3人の中にいるようで、とても優しい気持ちになれました。人が誰も死なない小説を読んだのは久しぶりでしたが(笑)、こういう小説ってすごく優しい気持ちになれるんですね。心が洗われた気がします。

数学嫌いにおすすめ!これを読めば数字が好きになる

私は学生の頃から完全な文系人間で、数学は苦手だし嫌いです。

でもこの小説を読んで、数字への考え方が少し変わりました。中学校のうちに読んでおけば、もう少し数学の成績が良かったかもしれません(笑)

「ピュタゴラスの定理」とか「◯◯の公式」とか、最初はなんだか難しそうだという気しかしなかったのですが、そのうち読み手である私も、語り手である私と同じように、だんだんとそうした数式たちを常に毅然とそこにある頼れる存在のように感じてきます。

なんだかこの時点で結構ネタバレしてしまっている気がしますが、ここからはネタバレ有の感想にうつります。

博士の愛した数式のネタバレ有感想

博士のこれまでの人生がもっと知りたい

この作品では、博士の過去についてあまり詳しく語られていません。

たとえばなんでこんなに子どもが好きなのか、とか。なんで数学が好きになったか、とか。語られるのは野球が好きなことと、義理のお姉さんと親交が深かったことくらいです。

博士のことを知れば知るほど、過去が気になります。きっとたくさんの素晴らしいことや、少し変わった性格ゆえに辛いことがあったんでしょう。ぜひスピンオフみたいなかんじで読みたいものです。

結局義理のお姉さんとはどんな関係・・?

途中、未亡人である博士の義理のお姉さんが、実は博士と深い仲だったことが明かされます。

しかし2人が恋人同士だったのか、どんな出会いをしたのか、なぜ一緒に暮らしているのか(恋人同士だとばれずに3人で暮らしていたの?)などは一切わかりません。

2人が恋仲だったことは間違いなさそうですが、どうしてお姉さんはなかなか博士に会おうとしないのか。

きっと、80分ごとに忘れられてしまうのが辛いのでしょうか。それとも昔の自分だけを覚えていてほしいのでしょうか。

ルートがいい子すぎる!!!

いつも笑顔で周りを明るくさせ、ときには自分の母親を諭すルート。小学生とは思えないほどしっかりしていて、でも子供らしい部分はしっかりあって、今までに出逢った小学生たちのなかでダントツで愛おしいキャラクターです。

どうしたらこんなふうに子どもを育てられるんだろう…と真剣に考えてしまいました。きっと、常に正直にまっすぐ向き合っている私の強さがあらわれているんですね。すごくすごく大事に育てられてきたんだと思います。

やっぱり、人から受けた愛情って、きっとどこかで同じように誰かに注いでしまうものなんでしょうね。これを読むと子供に愛情を注がずにはいられないでしょう。

深く想像すればするほど泣ける

博士の記憶は80分しか持ちません。それについて作中では案外淡々と語られるのですが、その奥にある博士の気持ちを想像すると、もうすればするほど悲しくなります。

だって、記憶がリセットされるごとに「自分の記憶は80分しか持たない」ことを自分が書いた付箋によって知らされるのです。本当に本当に、生きられているのが不思議なくらいだと思います。

そしてそんな博士と過ごす私とルートの気持ちも、本当に切ないです。

記憶が短時間しか持たない、そんな病気があるのかどうかはわかりませんが、すごくリアルに3人の気持ちが迫ってきます。


というわけで、博士の愛した数式のあらすじ・ネタバレ・感想を紹介しました。

こんなにいい小説に出逢ったのは久しぶり、というくらい胸にじーんときました。「この小説、すごい!(伏線の拾い方や事件の展開など)」と思うことはあっても、泣ける本当にいい作品ってあまり出会わないですよね。

あたたかい気持ちになりたい時、愛情を思い出したい時、是非よんでほしいです。

スポンサーリンク
336
336

シェアする

フォローする