各メディアにも取り上げられていたこともあり、名前を知っているという方も多いのではないでしょうか。
しかしこの作品、人によって捉え方が全く違うんですよね。
「ここ10年で一番面白い、紛れもない名作だ!」という方もいれば、
「全く意味が分からない、エロいだけの駄作だ!」とこき下ろす人もいます。
私個人としては、「教団X」は間違いなく、日本文学史に残る傑作だと思っています。
ということで、今回は衝撃の話題作「教団X」のあらすじと解説、レビューなんかを書いていこうと思います。
教団Xのあらすじ
謎のカルト教団と革命の予感。自分の元から去った女性は、公安から身を隠すオカルト教団の中へ消えた。絶対的な悪の教祖と4人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国を根幹から揺さぶり始める。神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、光とは何か。著者最長にして圧倒的最高傑作。
これだけ読んでも全く意味の分からないストーリーですね(笑)
ここからはもう少し詳しく教団Xのあらすじを書いていきます。一部ネタバレ要素もあるので、未読の方はお気をつけください。
楢崎の目の前から消えた1人の女性
物語は楢崎という男が、1人の女性を探している場面から始まります。
彼の交際相手だった女性が突然連絡もせずに姿を消してしまったんです。
そこで探偵事務所で働く友人に、彼女の行方を捜してほしいと依頼をするんですね。
しかし調べてみると、どうやら彼女はある宗教団体に関わっているらしいことが分かりました。
これまで宗教とは無縁だった楢崎は怪しいと感じつつ、彼女が関わっていたとされる宗教団体のアジトを訪れます。
松尾さんの話
宗教団体のアジトと噂される屋敷へ向かうと、そこには数人の男女が集まっていました。
彼らは「松尾さん」という老人の話を聞くために、定期的に集会を開いているということでした。
促されるまま、松尾さんの話を録画したビデオを見せられる楢崎。
松尾さんはブッタの教え、人間の脳みそのつくり、そして宇宙の期限など、宗教とも哲学ともいえない話をします。
どうやら彼らの組織は、消えてしまった彼女を誘拐するような団体ではないようです。
もう一つの宗教団体「教団X」について
松尾グループの人達に消えてしまった彼女のことを訊くと、以前松尾さんの集会に顔を出していたことが分かります。
しかし彼女は、松尾さんを騙し、巨額のお金をだまし取った詐欺団体の一員だったのです。
彼女たちは松尾さんとは別団体の、通称「教団X」に所属しているということでした。
そしてある日、楢崎は教団Xから誘われて、彼らのアジトへと連れていかれるのでした。
教団Xの実態
教団Xは松尾さんの昔からの知人である、沢渡という男が尊師として崇められていました。
アジトについた楢崎は血液検査(性病検査)を受けさせられ、その後何人もの女と交わらせられます。
現実とは思えない享楽的な世界に突然投げ込まれた楢崎は、次第に何が正しくて正しくないのか分からなくなってきます。
その後、沢渡との面談が許された楢崎は、松尾さんのグループにスパイとして潜りこむことを命令されます。
果たして、沢渡の狙い、教団Xの目的とは何なのか―。
物語はここまで来て、まだ1/3にも達していません。ぜひ続きは皆さんの目で確かめてもらえたらと思います。
ここからは教団Xとは一体どんな作品だったのか、そしてなぜ賛否両論分かれるのか個人的な意見を書いていこうと思います。
教団Xは未来に待つ闇に光を照らした作品
私が教団Xを読んで感じたのは、「生まれた時代が早すぎる」という思いでした。
作品の中では現代に残る宗教の教え、最新の脳科学、そして量子論など、様々な分野の知識が多く語られています。
そしてこれらの知識を用いて、「私たち人間とは何なのか」という人類最大の疑問を解き明かそうとしていくのです。
登場人物たちのドラマも、結局はこの疑問に一つの答えを出すための材料でしかありません。
そのためストーリー性が希薄という意見にも賛同するし、小難しい話ばかりでつまらないという意見にもある意味で賛同します。
小説はこれまで時代に合わせて、様々なテーマに向き合ってきました。
社会、平和、愛、死。
そして教団Xは、これらすべてのテーマを統括し、原点でもある最大のテーマに立ち向かいました。
この作品は挑戦的である作品がゆえに、読者は混乱し、様々な評価が飛び交っています。
しかし私は、いつの日かこの作品が文学史に名を刻む名作と評価されるのではないかと予感しています。
私たちは恵まれた世界に生きています。
これからさらに世界中が豊かになり、幸せ飽和した状態になったとき、皆一つの疑問に行き着くはずです。
「私達はなぜ生まれてきたのか」
そのとき、今作品のように人々を導く道しるべになってくれる作品が、世にあふれていることを願っています。