東京島

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桐野夏生さんが2008年に刊行した東京島は、第44回谷崎潤一郎賞に輝いた傑作です。

これまで無人島作品といえば男性目線で書かれたものが多かったですが、東京島では主人公・清子の目線から「男」や「人間」が生き延びてる様を描いています。

2010年には木村多江さん主演で映画化されたので、名前は聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

このページでは、スリルあり、笑いあり?のサバイバルエンタメ小説・東京島のあらすじと感想をご紹介します。

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東京島のあらすじ

清子は、暴風雨により、孤島に流れついた。夫との酔狂な世界一周クルーズの最中のこと。その後、日本の若者、謎めいた中国人が漂着する。三十一人、その全てが男だ。救出の見込みは依然なく、夫・隆も喪った。だが、たったひとりの女には違いない。求められ争われ、清子は女王の悦びに震える──。東京島と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世記。谷崎潤一郎賞受賞作。

東京島のはじまりは、清子と隆の世界一周クルーズがきっかけでした。

元々世界一周旅行に乗り気ではなかった清子は、旅の途中で暴風雨に襲われ無人島へ遭難。

何とか二人で生活しようと奮闘しているのも束の間、今度は23人もの若者たちが無人島へと漂流。

さらには11人もの中国人も無人島へ流れ着き、一つの島を舞台に奇妙な共同生活がはじまりました。

はじめは日本人同士協力しあっていましたが、次第に唯一の女性清子をめぐって、男たちの争いに火がつきます。

夫であった隆の死を皮切りに、相次ぐ住民たちの不審な死。そして怪しげな行動を続ける中国人たち。

清子は唯一の女性であることを武器に、島の女王として男たちとの戦いを生き抜いていくのでした。

ということで、ここからはもう少し詳しく東京島の面白さを解説していこうと思います。

女が一人で生きていくことをシビアに描いた作品

東京島では女性が1人で社会の中で生きていく厳しさを、シビアに描いています。

舞台は無人島ですが、実態は日本社会の縮図そのもの。

特に清子は無人島に漂流した時点で、決して若いとはいえない年齢。

年を老いていくことで変わる周囲の態度が、妙にリアルで怖かったです(笑)

しかも周囲に女性はただ一人、仲間と思っていた男たちは、自分の安泰をおびやかす脅威へと変わっていきます。

そんな中で現実を受け入れる強さや、環境に対応するタフさを持つ清子は、本当に強い女性だと思います。

必死に生き抜こうとする彼女の姿は時に滑稽ですが、男性社会の荒波を必死に泳ぎ切ろうともがく現代の女性たちにとって、笑ってばかりはいられない何かを感じる物語でした。

実は実際に起きた事件をモデルにしています

実はこの東京島、現実に起きた事件をモデルにしているんです。

その事件とは「アナタハンの女王事件」と呼ばれており、1945年から1950年にかけて北マリアナ諸島のアナタハン島で、無人島生活をつづけた日本人たちをモデルにしているんです。

本作で清子にあたる女性の名は、「比嘉和子」。

彼女は帰国後ブロマイド写真が飛ぶように売れるなど、一躍時の人となったようです。

アナハタン島では、彼女をめぐって少なくとも2人の男性が行方不明となっています。

戦時中から戦後の混乱期にかけて起こったことなので、詳しい調査が行われなかったこともあり、50年以上たった今でも大きな謎が残されている事件です。

この作品を読んで興味がわいた方は、こちらの事件を調べてみても面白いですよ。

ということで、ここからはネタバレ要素ありで、さらに詳しく東京島を解説していきます。

ネタバレが嫌な方はバナー画像から下は読まないようにしてくださいね。

桐野夏生さんのおすすめ作品は、こちらの特集記事で紹介しているので、気になる方はぜひ参考にしてください。

桐野夏生おすすめランキングTOP7

短期間で人が遭難しすぎではないでしょうか?

おそらく読み終わったあとに、一番突っ込みたくなるのはここですよね。

この島(東京島)には、どんだけ遭難者が集まってくるんだと(笑)

物語の中で具体的に何年経ったのかは分かりませんが、長くて10年経ったとして、合計4グループ(清子夫婦・若者・中国・海外の女性たち)も遭難者が漂着したことになります。

だったら清子が漂着する前にも、誰か無人島にたどり着いていたのではないでしょうか。

しかし作品の中では、前に誰かが暮らしていた痕跡のようなものは見つかっていません。

あるのは謎のドラム缶だけ…。

まあ、そのあたりが詳しく説明されていても、新しい突っ込みポイントが増えるだけなんですけど、もう少し説明は欲しかったですね(笑)

あれ、なぜ彼らは救出されないんだ?

物語の最後では、清子と娘と海外の女性たちでモーターボートへ乗り込み、無事島から脱出に成功します。

そして脱出した彼女たちは東京で新しい暮らしをスタート、島に取り残された人々は新しい文明を作り、物語は終わりを迎えます。

え、清子さん!みんなを助けないの?

いくら色々と事件があったからといって、放置することはないんじゃないでしょうか。

それに国も捜査とかしてあげないんですか?

遭難して死んだと思われていた女性が生きて戻ってくれば、必ず世間で話題になると思うんですけど。

色々と人に言えないことをしたので、島での生活を隠し通そうとしたのかもしれませんが、我が子も見捨てるとは恐ろしいですね(笑)

まあ、見捨てられた子供も、現代社会にいるよりは島で暮らした方が幸せかもしれませんね…。

東京島が伝えたかったこととは?

この作品はエンタメ小説としては面白いのですが、なかなかメッセージを読み取るとなれば難しいですよね(笑)

もし男だらけの世界に、平凡な容姿をした女性が放り込まれたらどうなるのか。

という妄想に答えた作品ですが、結局のところ女性は強いという話に落ち着くのでしょうか。

あとは作中で隆が食べたいと言っていた、ジャムをべったり塗ったトーストが、めちゃくちゃ美味しそうでした。

食べ物をおいしそうに描写できるかどうかは、一流の作家である条件だと勝手に思っています。

もちろん桐野夏生さんは、私が言うまでもなく誰もが認める超一流小説家ですが、彼女のすごさを改めて思い知った作品でもありました。

生命力に満ちた作品なので、辛いことがあって落ち込んでいる方にも、個人的にはおすすめしたい一冊です!

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