ボトルネック

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ボトルネックは米澤穂信作品の中でも、特に後味が悪く、その分読者に突き刺さる物語です。

自分が生まれる代わりに、生まれるはずのなかった姉が生まれた世界。

あのとき、ああしていればどうなったのだろう、ど誰もが一度は抱いたことのある想像に、作者は一つの答えを提示しています。

しかし伏線が細かなこともあって、なかなか一度読んだだけでは、本当のメッセージに気づくことはできません。

ということで、今回はボトルネックのあらすじと、私が思う作品に込められたメッセージをご紹介しようと思います。

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ボトルネックのあらすじ

恋人だったノゾミが2年前に死んだ東尋坊を一人訪れたリョウは、謎の声に導かれるまま崖から転落してしまいます。

しかし目覚めた場所は住み慣れた町の近所の公園、不思議に思いながら自宅へ戻ったリョウは、そこで生まれる前に死んだはずの姉・サキと出会います。

リョウが目覚めた世界は、自分の代わりに姉の先が生まれてきた世界だったのです。

はじめは事態が掴めずに疑いあう二人でしたが、話していくうちにお互い嘘をついていないことが分かってきます。

やがてお互いの世界の間違い探しをはじめた二人、そしてリョウは知りたくなかった幾つもの事実を目の当たりにします――。

ということで、簡単なあらすじはここらへんまでにしておきます。

まだ読んでいないという方は、ぜひネタバレを見る前に原作を読んでくださいね!

ここからは私の個人的な感想と考察をご紹介していきます。

ボトルネックの感想

妄想が現実(小説)になるって面白い

自分の行動が未来の世界へどんな影響を与えるのか。

皆さん人生で一度は想像したことがあるのではないでしょうか。

ボトルネックはそんな想像を、小説という形で現実にしてくれました。

過去へタイムスリップする作品といえば、小説ではケン・グリムウッの「リプレイ」、映画では「バックトゥザフューチャー」や「バタフライエフェクト」などが有名ですね。

ただボトルネックの面白さは自分が過去へ飛ぶのではなく、姉が生まれたパラレルワールドへ飛ぶという、まったく新しい発想の転換。

過去に戻ったわけではないので、いくら頑張っても自分の世界を変えることはできません。

この不条理感こそが、ボトルネックの切なさを際立たせています。

胸がどんより沈むような、有痛性のあるストーリ―を読みたい方におすすめです。

登場人物の会話が知的すぎて少し萎えるけど…

ボトルネックで私が唯一引っ掛かったのが、登場人物の会話がすべて知的というか、インテリぶってる点です。

高校生の会話で「オプティミスト」なんて単語が出るのは普通はないですよね(笑)

もう少し自然な会話にしてくれたら、途中で一旦醒めることはなかったので、そこだけ残念ですね。

小説を読み物として読める人には、そこまで気にならないのでしょうか。

ということで、ここからは私個人の考察を進めていこうと思います。

ボトルネックの個人的な考察

パラレルワールドは存在したのか?

すべてリョウの妄想だった説もありましたが、私はパラレルワールドは存在していたと思います。

そして実際にリョウはパラレルワールドで3日間過ごしています。

最後に母親から送られてくるメールで、実際にパラレルワールドへ行ったことが分かりますね。

母親に恥をかかせた=葬式には出ていない

パラレルワールドへ行く前は、まだ葬式が始まるまで半日程度空いていたので、最低でも半日間はリョウの意識は飛んでいたことになります。

さすがに東尋坊の崖で半日間、突っ立ったままというのは不自然ですよね。

母親の怒り方からも、実際にパラレルワールドで3日間生活していたと考えていいでしょう。

つまり、ボトルネックという小説は、パラレルワールドへ飛ぶことがアリな世界という前提で考察を進めていけないのです。

謎の声の正体は?

リョウが崖から落ちるきっかけにもなった謎の声は、死んでしまったノゾミであると思われます。

おそらく彼女は作中にも出てきたグリーンアイド・モンスターになってしまったのでしょう。

グリーンアイド・モンスターとは、生きた者を妬む怪物です。

パラレルワールドがありなのだから、ノゾミの恨みが怪物化することもアリなのです。

こうしてノゾミの恨みによって、リョウはパラレルワールドの世界へと飛ばされてしまったのでした。

しかしノゾミを引き寄せたのは、リョウが抱えていた罪悪感も大きな要因の一つだと思います。

ボトルネックはパラレルワールドや怨念といった超常現象が出てきますが、結局はリョウの内面の葛藤を描いた作品なのですから。

最後の電話はなぜツユだった?

現実世界に戻ったとき、死のうとしたリョウを引き留めた電話はサキではなくツユからでした。

パラレル世界でサキと携帯電話の番号を交換しているので、ここはサキから掛かってくるのが自然です。

しかし最後の電話は同じ姉でも、パラレル世界のサキではなく、おそらくリョウの世界で死んでしまったツユからでした。

これはツユという名前に注目すると、一つの解釈ができます。

「露」という時には、夜露などの水滴を意味する以外に、内面が明らかになるさまという意味もあります。

つまり、最後の電話は姉からの電話のカタチをした、リョウの「本当は生きたい」「サキのように変わりたい」という気持ちが露わになったのではないでしょうか。

そこで電話先のツユは「イチョウの木を思い出して」と呼びかけます。

イチョウの木は今作品において、リョウとサキの違いを象徴するものです。

リョウの心の中に眠るツユは、想像力さえあればリョウもきっと変われるはずだと、自分に向けてメッセージを送っていたのです。

リョウは結局どちらを選んだ?

しかしツユの呼びかけもむなしく、リョウが選んだのは「死」でした。

最後に送られたメールは、ノゾミが見せた幻想という説を唱えている人もいますが、ここはシンプルに母親が送ったものと考えていいと思います。

リョウはパラレルワールドでサキが守った幸せそうな家庭を見て、一瞬希望を抱きます。

しかし現実の母親からのメールによって、それはただの想像に過ぎないことに気づかされたのです。

こうしたわずかに灯された希望さえ吹き消してしまう無慈悲なラストこそが、ボトルネックと読者の心に爪痕を残す傑作にしたのです。

ということで、久しぶりにボトルネックを読み返した勢いで、私の個人的な感想と考察を書かせていただきました。

ボトルネックは人によってとらえ方が全然違うと思うので、ぜひ皆さんの解釈も聞かせてくださいね!

ちなみに当サイトノベナビでは、米澤穂信さんのおすすめ作品を紹介する特集記事も紹介しているので、ぜひご覧ください。

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