白夜を歩く二人の男女を描いた長編ミステリー大作「白夜行」。ドラマ、映画と映像化作品を見たという方はいても、原作はまだ読んでいないという方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は誰もが求める傑作「白夜行」のあらすじ、感想をご紹介。本作の魅力を余すところなく伝えていきたいと思います。
白夜行のあらすじ【ネタバレ注意】
1973年、大阪の廃墟ビルで一人の質屋が殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りする。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂―暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んで行く。二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪。だが、何も「証拠」はない。そして十九年…。息詰まる精緻な構成と、叙事詩的スケール。心を失った人間の悲劇を描く、傑作ミステリー長篇。
あらすじといっても、白夜行は文庫本版で800ページを超える超大作なので、これだけではほんの一部しか紹介することができません。そこでここからは、各章のあらすじをさらに細かく紹介していきます。
すべての始まりとなった事件
大阪の廃墟ビルで桐原亮司の父・洋介が殺された。容疑者として浮かんだのは、洋介の妻・弥生子と、質屋「きりはら」で父の元で働いていた松浦。弥生子と松浦は夫に隠れて関係を持っていたのだった。しかし二人にはアリバイがあったため、捜査は難航した。
その後もう一人、容疑者として浮かんだのが、西本文代だった。彼女は娘・雪穂と二人で暮らしており、事件当日に洋介が自宅へと尋ねていたのだった。西本文代はお金にかなり困っていたこともあり、金銭目的での殺害が怪しまれた。しかし西本文代にもアリバイがあり、捜査は迷宮入りかと思われたのだが…。
中年刑事である笹塚は、この事件に隠された大きな闇を直感的に感じていた。
藤村都子の婦女暴行事件
清華女子学園に通う藤村都子が、何者かに襲われた。第一発見者は唐沢雪穂、西本文代の娘であった雪穂は養子に出て、苗字を唐沢に変えていた。
一方、藤村都子を襲った容疑をかけられた大江中学の菊池は、犯行が行われた時間に映画を観ていたことが証明され、難を逃れた。菊池のアリバイを証明してくれたのは、同じ大江中学に通う桐原亮司だった。
友彦とマリンクラッシュ
高校生になった桐原亮司は、園村友彦を誘って主婦を相手に売春斡旋をしてお金を稼いでいた。そんな中、園村友彦は亮司との約束を破り、客である一人の女性と深い仲になる。しかし行為中に不慮の事故で相手が死んでしまい、動揺した友彦は亮司へと相談するのだった。はじめは友彦を見捨てようとした亮司だったが、友彦がパソコンの知識を持っていることを知ると、彼を助けるために行動を起こす。
一方、唐沢雪穂は家庭教師で大学生の中道正晴から、仲間内で作ったというパソコンゲームを見せてもらっていた。しばらくして、無限企画という通信販売会社が「サブマリン」というパソコンゲームを販売した。そのゲームは中道正晴が仲間内で作ったとゲームと非常によく似た内容だった。
江梨子の悲劇と西口奈美江の逃避行
女子大へ進学した雪穂は、友人である江利子とともに、清華女子大学へと進学した。そこでダンス部に入部したのだが、雪穂はその美貌から入部してすぐに男子生徒の人気者へなった。しかし大手製薬会社の専務の長男で、ダンス部の部長である篠塚一成は、雪穂ではなく江利子と付き合うのであった。その後、江梨子は帰宅中に何者かに襲われてしまう―。
一方、亮司は友彦とともに、偽造キャッシュカードを作っていた。ある日無限企画の経理をしており、銀行に勤めている西口奈美江が、ヤクザである榎本に追われていることを知る。奈美江は勤務先の銀行から不正に資金を入金、榎本へと貢いでいたのだ。銀行からばれそうになり、榎本から手を引きたがっていた奈美江は、亮司へと助けを求めるのであった。
雪穂の結婚とビジネス
雪穂はダンス部の先輩である高宮誠と結婚することになった。しかし誠は結婚直前になって、職場の派遣社員である三沢千都留に惹かれてしまっていた。友人である篠塚一成の助けを借りて、誠は結婚前夜に千都留へと思いを伝えようとする。しかし千都留は誠の前には現れず、結局雪穂と結婚する運命なのだと受け入れるのであった。
しばらくして、誠の会社で開発した生産技術が、他社に漏洩する事件が起きた。生産技術にアクセスするためには、社員にしか配られていないパスとIDが必要だったのだが…。
結婚してしばらく経つと、雪穂は友人の手伝いとして、アパレル関係の仕事を始めた。最初は誠も応援していたが、次第に家事も疎かになり、誠が雪穂を叱る回数も増えてく。
そんな中、雪穂に誘われて向かったゴルフのレッスン上で、誠は千都留と再会するのだった。
友彦と亮司と「MUGEN」
友彦は亮司が開いたパソコンショップ「MUGEN」で働いていた。ある日、亮司のもとに昔の知り合いを名乗る松浦が現れた。松浦は昔質屋「きりはら」で働いていた男だ。二人は一見親密そうだったが、亮司の表情の奥底にある闇を友彦は見逃さなかった。
亮司は松浦に手伝う形で、当時流行していたスーパーマリオの海賊版の製造を手伝う。しかし亮司は友彦には絶対手伝わせなかった。
そして大晦日の晩、友彦と彼女の宏恵、そして亮司で年越しを祝っていたところ、電話が入り亮司は慌てて外に飛び出した。友彦は亮司の帰りを待っていたが、疲れ果てて帰ってきた亮司は友彦に今すぐ帰るように声を荒げた。そして、これが友彦と亮司が言葉を交わした最後となった。
年が明けてしばらくして、店を切り盛りする友彦のもとに、「笹塚」と名乗る一人の刑事が訪れるのであった。
ということで、ここから物語は後半戦へと向かいます。続きが気になるという方は、ぜひご自身で読んでみてください。
ここからは白夜行を読んだ私の感想を綴っていきます。
白夜行を読んだ感想
映像化作品を見ずに読んでほしい!
白夜行の原作では、物語の中心人物である唐沢雪穂と桐原亮司の心情描写が一切ありません。描かれるのは周囲の人物から見た二人の姿のみ。そのため読者によって、主人公たちに抱く印象は全く異なると思います。
ただ映像化作品はやはり監督の思い描く白夜行像が強すぎて、原作を読む前に見てしまうと、必ず影響を受けてしまうと思うんです。だから、まだ白夜行のドラマ・映画を観ていないという方は、今すぐ原作を読むことをおすすめします。(笑)
個人的にはドラマ版(綾瀬はるか)より、映画版(堀北真希)の方が好きでした。
結局、二人の関係は何だったの?
二人のあいだにあった絆は何だったのか、白夜行を読み終わったとき色々と考察してしまいます。愛し合っていたのか、それとも男女を超えた絆だったのか。色々と見方はあると思いますが、私は亮司の一方的な献身のように思えるんですよね。
なぜなら、亮司が雪穂へ行った行為と比べると、雪穂が亮司へ行った行動はあまりに軽すぎるからです。そもそも雪穂は自分の夢を叶えていったのに対し、亮司は自分の夢や理想を叶えたことが一切ありません。
また、亮司の友彦への行動は節々に愛を感じますが、雪穂の言動には愛を一切感じないからです。篠塚一成への感情も、愛や恋ではなく、ただの独占欲としか感じられません。
そのため、私は雪穂はサイコパス説を推したいと思います。(笑)
白夜行の続編?幻夜は読みましたか?
実は白夜行には続編があるのをご存知でしたか?
2004年に発行された「幻夜」には、白夜行の主人こうである雪穂?らしき人物が登場するのです。作中では明言されていませんが、雪穂であることを仄めかす記述がいくつも出てきます。
また実はこの白夜行、幻夜だけでなく更なる続編の構想も練られているという噂もあります。(2016年では雪穂はもう50歳近くになっていますね)
三部作にわたる超大作になるかはさておき、白夜行が面白かったという方は、ぜひ幻夜も読んでくださいね!
また白夜行以外の東野圭吾作品を読みたいという方は、こちらの記事を参考にしてください。
白夜行の関連情報
作品情報
作者 | 東野圭吾 |
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刊行 | 1999年 |
発行部数 | 200万部 |
出版社 | 集英社 |
映像作品情報
ドラマ作品
放送年 | 2006年1月~3月 |
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放送局 | TBS系列 |
平均視聴率 | 12.28% |
主な出演者 | 山田孝之、綾瀬はるか、武田鉄矢、他 |
映画作品
公開年 | 2011年1月 |
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制作会社 | 映画「白夜行」制作委員会 |
興行収入 | 4億2000万円 |
主な出演者 | 堀北真希、高良健吾、船越英一郎、他 |