ケモノの城のあらすじと解説(※一部ネタバレ)

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ケモノの城
ジウシリーズやストロベリーナイトなどで知られる誉田哲也さん。

グロテスクな描写の多い作家ではありましたが、「ケモノの城」はちょっとこれまでとはスケールが違います。

健全な精神を持っている方であれば、かなり心がダメージがいくと思います。

ただ間違いなく強烈に記憶に残る一冊にはなるので、グロ耐性がある方は是非チャレンジしてください。

ということで、今回はケモノの城のあらすじや、解説なんかをつらつらと書いていこうと思います。

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ケモノの城のあらすじ

ある街で起きた監禁事件。保護された少女の証言に翻弄される警察。そんな中、少女が監禁されていたマンションの浴室から何人もの血痕が見つかった―。あまりにも深い闇に、果たして出口はあるのか?小説でしか描けない“現実”がここにある―。圧倒的な描写力で迫る衝撃のミステリー。

物語は警察に保護された一人の少女・麻耶の証言から始まります。

麻耶が監禁されたというマンションの一室へ向かうと、そこには彼女と同じように体中に傷を負った女・アツコがいました。

外から見えないように段ボールで窓が覆い隠された異常な室内、そして染み付いた異臭。

この恐ろしい部屋でどんな事件が起きたのか。

そして麻耶とアツコの証言から浮上したすべての元凶「ヨシオさん」とは、一体何者なのか―。

二転三転する二人の女の証言に振り回されながら、刑事たちは執念を燃やして真相の究明に立ち向かいます。

一方、5歳年下の聖子と同棲している辰吾は、ある日見知らぬ男が部屋に居つくことになり、戸惑いと苛立ちを覚えます。

聖子が自分の父親と紹介したこの熊のような男は何者なのか。

辰吾は謎の男の正体を暴くべく、次第に男を監視し、尾行するようになりました。

果たしてこの男の正体は何なのか、そして麻耶とアツコが語る凶悪事件とどのように関わってくるのか。

吐き気を催す過激な描写に、予想できないストーリー展開。一度読んだら忘れられえない衝撃的な小説となっています。

※以後、一部ネタバレ要素があるので、未読の方はご注意ください。
ケモノの城

ケモノの城のモデルとなった事件とは?

知っている人も多いとは思いますが、ケモノの城は北九州で実際に起きた監禁殺人事件をモデルとしています。

ある男が一家全員をマインドコントロールし、互いに殺し合いをさせる。

自分は一切手を汚さずに一家全員を抹殺したこの事件は、平成史上最凶の犯罪と語られることも多く、あまりにも残酷な事件内容のため、各報道機関では自主的に報道規制がかけられたそうです。

最近ではメディアで語られる機会も多くなり、一般の人の中でも稀代の凶悪事件として認知されるようになってきていますね。

「ケモノの城」の物語の中核となる監禁殺人事件の内容は、ほぼモデルとなった事件の通りとなっています。それゆえ拷問や殺害、そして解体シーンの描写は匂いを感じるほど克明に描かかれており、現実を超えたリアル感があります。

まだ事件の内容を知らない方は、「ケモノの城」を読んだあと、ぜひモデルとなった事件の概要も調べてみてください。

小説で描かれた凄惨な事件が、実際に現実でも起きていたことに驚くはずです。

どちらかといえば、まだ「ケモノの城」は細かなディティールを理解できる分、リアリティがあるというか現実感がありますね…。

登場人物は読者・世間の代弁者たち

ケモノの城では捜査を進める警察側の視点から見たパートも多く、刑事たちが事件に対して様々な感情を抱いていることが描かれています。

残虐な事件内容に生理的な拒絶を示す者、主犯である「ヨシオさん」の持つ伝染する悪意に警戒する者、そして共犯者にもなってしまった被害者に怒りを抱く者。

これらは私たちがこの事件を知って抱く、ぶつけようのない気持ちを代弁してくれているんですね。

「なぜ彼らは従うことしかできなかったのか?」
「なぜ誰一人として犯人に抗うことができなかったのか?」

北九州監禁事件を知ったとき、私がまず抱いた感情はこれでした。

しかし「ケモノの城」を読んでいくうちに、自分の想像力のなさに気づかされました。

人間は抱えきれない恐怖に対峙したとき、その場をどう回避するかかということしか考えることはできません。

そして凶悪は犯人は、そんな人間の習性を利用し、互いに傷つけ合わせ逃げ場を潰していきます。

「なぜ彼らは従うことしかできなかったのか?」

それはもしかすると、死んでしまった被害者たちが、最後の瞬間に一番強く思ったことなのかもしれません。

伝染する悪の恐怖

私が最も怖いと感じたのは、「ヨシオさん」のように狂気をもった悪は、人々に伝染していくということでした。

まだ洗脳状態の支配下にあったアツコは、「ヨシオさん」と共に行った凶行を、時に光悦に似た表情を浮かべて語り始めます。

アツコの心の中に、「ヨシオさん」の悪が伝染してしまったのです。

また生き残りの1人である麻耶も、狂気に長時間さらされた結果、正常な心が壊れてしまいました。

ケモノの城で最も作者が語りたかったのは、この「伝染する悪の恐怖」ではないでしょうか。

人間は得体の知れない恐怖に出会ったとき、正常な判断能力を簡単に失ってしまいます。

これは「学習性無気力」と一言で片づけられる現象ではないのかもしれません。

わたし達は心の奥底に、どこか残虐で凶悪な衝動を求める傾向があるのではないでしょうか。

サイコパスと私たちを分ける境界線は、「良心」という非常に薄い殻で覆われているだけなのかもしれないと恐ろしくなりました。

面白い、とは言えない!ただ読んで欲しい一冊

テーマがテーマなだけに、この小説を面白い!と大々的に言うことはできません。

しかし現実を超えたリアリティ、そして圧倒的な刺激を皆さんにもぜひ味わってほしいです。

この小説は、加害者が悪魔のように描かれたり、被害者が哀れな善良市民のように描かれたりはしません。

虐げる側の人間と虐げられる人間が、ただただ描かれています。

悪、犯罪、良心とは何なのか。ぜひケモノの城を読んで考えてみてください。

またケモノの城のように、読んだあと厭な気分になるイヤミス小説がお好きな方は、こちらの特集記事で紹介している小説も是非読んでみてください!

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