「去年の冬、きみと別れ」のあらすじ感想【ネタバレ注意】

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以前紹介した「教団X」で大きな話題を呼んだ人気作家・中村文則さんの作品、「去年の冬、きみと別れ」の映画化が決定しました。

全192ページと薄い本ながら、伏線が随所にちりばめられており、ミステリー要素の強い作品となっています。

今回は2018年3月に公開予定の「去年の冬、きみと別れ」のあらすじやおすすめポイントを解説していきます。

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「去年の冬、きみと別れ」のあらすじ

ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し、真相は迷宮入りするかに思われた。だが―。日本と世界を震撼させた著者が紡ぐ、戦慄のミステリー!

物語は、ライターの「僕」が、死刑囚・木原坂雄大と対面するところから始まります。

彼は二人の女性を殺した猟奇的殺人犯で、死刑判決を受けて拘置所に拘束されています。

なぜ、彼は人を殺したのか―。

その答えを知るため、「僕」は木原坂雄大のもとを訪れますが、交換条件として事件のことを話す代わりに、「僕」の内面を教えるように条件を突きつけられます。

「狂気の交換」ともいえる異様な行為を続ける中で、「僕」は知られざる事件の真相を掴んでいくことになります。

木原坂雄大の犯した事件とは?

木原坂雄大は現在の年齢が35歳。

カメラマンとしてアート写真を撮っており、一部の層から高い評価も受けていましたが、2人の女性を殺した罪で捕まり、死刑判決を受けています。

彼は幼い頃から両親の元を離れ、姉と一緒に養護施設で幼少期をすごしました。

その後、自動車の部品メーカーで働きながら、写真の専門学校へ通い、カメラマンとしての道を進み始めるのでした。

中規模でありながら、海外の賞も受賞した彼の人生は順調に見えましたが、2人の女性を焼き殺した罪で捕まってしまいます。

一つ目の事件は、撮影中の不慮の事故として警察に処理されましたが、同様の事件が二度続いたことにより、彼は有罪判決を受けてしまうのでした。

しかし「僕」は彼を調べるうちに、一つの疑問へとたどり着きます。

なぜ、彼は被害者が燃えている様子を写真におさめなかったのか。

事件を起こした当時から写真に対して狂気じみた信念を持っていた彼なら、目の前で女性が燃えていれば必ず写真を撮ったはず。

そして、それこそが2人の女性を焼き殺した動機のはず。

本当にこれは殺人事件だったのか、木原坂雄大の周囲を調べていく中で、「僕」は異様な違和感を覚えていくのでした。

木原坂雄大の姉が抱える秘密とは?

取材の中で「僕」は木原坂雄大の姉・朱里とも接触することになります。

しかし、彼女は「私達の領域にまで、来ることはできない」と「僕」を突き放します。

姉は心を病んでおり、これまで交際した男性2人を自殺に追い込んでいると、木原雄大から教えられた「僕」は、それでも姉の魅力に負けてしまい、彼女の自宅を訪れてしまいます。

そして彼女の手によって絶頂を迎えた「僕」に、彼女は小さな声で「…私を助けて」と言い残すのでした。

果たして木原坂雄大の姉はどんな秘密を抱えていて、何から助け出してほしいのか。

彼女の秘密を探るためにも、「僕」は取材を続けていくことになります。

K2という謎の団体

木原坂雄大は事件を起こす前、K2という謎の団体に所属していました。

K2とはある天才人形師の愛好家たちを集めた団体で、木原坂雄大を調べるために「僕」はK2のメンバー、そして人形師とも接触します。

死人さえ蘇えらせることができる天才人形師から話を聞くうちに、木原坂雄大が追い求める芸術と、彼の異常性が明らかになります。

オリジナルがいなくなることで、人形は本物以上に輝きだすことがある。

あるメンバーからそんな話を聞いた木原坂雄大は、写真でも同じことを再現するために、女性を二人焼き殺したのではないか。

取材を進めていくうちに、僕は彼の動機について確信めいたものを抱くのでした。

ということで、ここまでが「去年の冬、きみと別れ」の前半パートとなります。

後半からは読者を驚かせる展開が続くので、未読の方はぜひ自分の目で結末を確かめてみてください。

ここからは個人的な感想・レビューを紹介し、後半からは核心部分のネタバレに迫っていきます。

思わぬ本格的なミステリーに驚き

私が初めて読んだ中村文則さんの作品は「教団X」だったのですが、今作品は全く違った作風で驚かされました。

まさかミステリ―要素の強い、というかミステリー小説も書けるとは…。

冒頭から読者を驚かせる仕掛けも用意されており、ミステリー好きの人が読んでも楽しめる小説になっていると思います。

作品ごとに色々な挑戦をしている作家さんなので、今後発表される作品にも期待ですね!

一度読んだだけではトリックが分からないかも…?

「去年の冬、きみと別れ」は、読者を騙すためのトリックが何重にも仕掛けられているので、一回読んだだけでは真相は分からないかもしれません。

それくらい複雑な小説になっているので、流し読みが癖になっている人は注意が必要です。

またミステリー小説に馴染んでいる人であれば、登場人物たちの動機や、事件の偶然性に少し物足りなさを覚えるかもしれません。

結構癖のある作品なので、人によっては「ふざけんな!」と思ってしまうかもしれませんね。

2018年3月の映画化はどうなる!?

この作品は映画化が決まっており、2018年の3月10日に公開されることが先日発表されました。

主演にはEXILE・三代目J Soul Brothers from EXILE TRIBEの岩田剛典、加えて斎藤工や山本美月といった豪華キャストが脇を固めます。

しかしこの作品、読んだ方には分かると思いますが、実写化が非常に難しいんですよね…。

肝心な仕掛けが一種の叙述トリックになっているので、映像化してしまうと一気にネタバレとなってしまう危険性が高いです…(笑)

果たして監督や脚本家は、いかにしてこの映像化不可能と言われる作品を料理していくのか。

原作を読んだ方には、そのあたりも楽しみの一つですね!

では、ここからは物語の核心に迫るネタバレを解説するパートとなるので、ネタバレはやめて!という方はご注意ください。

「去年の冬、きみと別れ」のネタバレ

実は木原坂雄大は誰も殺していません

序盤では木原坂雄大が二人の女性を殺した前提で話が進んでいきますが、実は彼は誰も人は殺していません。

1人目の女性が死んでしまったのは全くの偶然で、二人目の女性が死んでしまったのは、彼を憎む人たちによる策略だったのです。

小説の最中では彼の異常性を際立たせる情報が、本編とは別の挿入されていますが、これも読者を騙すための罠だったのですね。

普段ミステリー小説を読まない方は、この真実が明らかになったとき驚くこと間違いなしです(笑)

「僕」に取材をさせていた男の正体とは?

作中で「僕」は編集長に言われて、木原坂雄大のことを取材し始めたと記されていますが、実はこの編集長こそ、木原坂雄大を殺人者に仕立て上げた張本人だったのです。

彼は昔、1人の盲目の女性を愛していました。

何事にも前向きにチャレンジする彼女と、彼女を危険に晒したくないと過保護に走ってしまう男。

二人はいつの間にか気持ちにすれ違いが生まれてしまい、彼女は男に別れを告げます。

そしてそんな彼女を写真のモデルに選び、事故によって死なせてしまったのが木原坂雄大だったのです。

男は木原坂雄大を許すことはできず、彼の狂気によって心身に傷を負った女性とともに、彼を陥れる計画を企てるのでした。

それは木原雄大が再び焼身事故を起こしたように見せかけ、一件目の事故も故意の殺人と警察に思わせ、彼を死刑に追い込もうという恐ろしい計画だったのです。

その後、編集長となったその男は、「僕」に木原坂雄大の本を書くように仕向け、事件の真相を書いた小説を拘置所で読ませることで、復讐を完成させようとしていたのでした。

実は読者が読んでいたこの作品は、編集長である男が完成させた小説だったのです。

焼き死んでしまった二人目の女性とは

編集長である男は木原坂雄大へ復讐するとともに、彼の心を弄んだ姉・朱里へも同時に復讐を果たします。

実は焼き死んでしまった二人目の女性は、薬で眠らされた姉の朱里にすり替えられてしまていたのです。

男たちは二件目の焼身事故を起こすことで弟の雄大に復讐を果たすとともに、姉の朱里さえも抹消することに成功していたのでした。

冒頭の献辞の意味とは?

「去年の冬、きみと別れ」の冒頭では、海外小説のように作者の知り合いと思わしき人物へ向けた献辞が記されています。

基本的にこの部分は作者の自己満なので読者には関係ないのですが、この作品は編集長の書いた小説なので、献辞にも意味が込められているのです。

実はここで記されているイニシャルは、木原坂雄大と共犯者である女性の本名なんです。

作品には直接関係ないことですが、こういった仕掛けがあることで、より一層作品のリアリティが増しますね。

ということで、今回は「教団X」で大きく注目を集めた中村文則さんの「去年の冬、きみと別れ」のあらすじやレビューを紹介しました。

ミステリー色の強い作品となっているので、普段文芸作品を読まない方にもおすすめです。

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