夏の沈黙のあらすじとレビュー【ネタバレあり】

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久々に超・当たりミステリーを読んだ興奮をそのままに、「夏の沈黙」についてあらすじやレビューを書かせていただきます。

本屋のポップ広告に釣られて買ってみた一冊でしたが、冒頭からいきなり心を掴まれ、どんどん読み進めてしまいました。

普段国内モノ9割、海外モノ1割ぐらいでしか海外ミステリーを読まない私ですが、登場人物が少ないから名前を憶えやすく(これ大事!)、難解な言い回しもなかったので読みやすかったです。

ということで、普段海外ミステリーをあまり読まない方も是非読んでみてください。

それではまずは簡単なあらすじから紹介していきます。

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夏の沈黙のあらすじ

テレビドキュメンタリー制作者のキャサリン。49歳の彼女は順風満帆の生活を送っていた。手がけたドキュメンタリー番組が賞を獲得、夫は優しく、出来がいいとはいえない息子も就職して独立している。だが、引っ越し先で手にした見覚えのない本を開いた瞬間、彼女の人生は暗転した。そこに登場するのは自分自身だ。しかもその本は、20年にわたって隠してきた、あの夏の秘密を暴こうとしている!圧倒的なリーダビリティ、巧緻きわまりない伏線、予測不能の展開。発売を前に25か国で発売が決定した、大型新人の驚異のデビューミステリ!

今知ったのですが、作者はこれがデビュー作だったんですね。

構成があまりに見事だったので、ベテラン作家とばかり思っていました。

みなさんも、この本を読むときには、デビュー作だからと甘く見ない方がいいですよ。

ここからは、もう少し詳しく夏の沈黙のあらすじを解説していきます。ネタバレが嫌な方は読み飛ばすようにしてくださいね。

主人公・キャサリンは理想のキャリアウーマン

今作品の主人公は、バリバリのキャリアウーマン・キャサリン。

彼女はテレビドキュメンタリーの製作者として活躍しており、弁護士の夫は優しく、一人息子のニコラスも無事?就職して、一応独立しています。

つまり絵に描いたような幸福な人生を歩んでいるというわけです。

しかしそんな彼女の幸せも、引っ越し先で見つけた一冊の小説によってぶち壊されてしまいます。

「行きずりの人」という題名のその本には、シャーロットという名の女性が登場しており、キャサリンをモデルとしていることは明らかでした。

そして作中では、キャサリンが20年間隠してきた彼女の秘密が描かれていたのです。

誰が・何のためにこの本を書いたのか

「行きずりの人」には、キャサリンが誰にも知られたくなかった秘密が克明に描かれていました。

しかし作者の名前で調べてみても、キャサリンには心当たりがありません。

一体誰が書いたのか、そして何のためにキャサリンのもとへ送ってきたのか、彼女は自分の力で調べていくことになります。

復讐に燃える老人・スティーブン

作中ではキャサリン視点と交互する形で、老人・スティーブン視点のストーリーも描かれていきます。

彼は妻・ナンシーを癌で亡くしており、一人孤独に暮らしていました。

実は「行きずりの人」を書いた作者は、スティーブンであることが早い段階で読者には明かされます。

しかしなぜ彼がキャサリンへの復讐に燃えているのか、そして行きずりの人には何が書かれているのかは、中盤になるまで明らかにはなりません。

このじわりじわりと、キャサリンの過去に迫っていく構成も、読者を飽きさせずに見事だったと思います。

ネタバレ注意!キャサリンが隠した20年前の過去とは?

ここからは物語の重要な部分に触れるので、これから読もうと考えている方は読まないように注意してください!

「行きずりの人」では、シャーロット(キャサリン)が夫と息子と一緒に訪れたスペイン旅行での日々が語られていました。

旅の途中、夫は仕事で急用が入り、シャーロットと子どもを残して一人帰国します。

そしてスペインの地に残されたシャーロットは、現地で出会った一人の青年とよからぬ関係を持ってしまいます。

人目を隠れて何度も愛し合う二人。そしてシャーロットが帰国する前日に、事件は起きてしまうのでした。

シャーロットが海辺で目を離したすきに、息子が遊んでいたボートが沖の方へ流されてしまったのです。

どんどん小さくなっていくボートを、シャーロットを愛してしまった青年が泳いでおいかけます。

何とか息子のボートを岸の方まで引っ張っり、助けに来た人たちにボートを渡した青年ですが、自らは体力が尽きてしまい、そのまま溺れて死んでしまいました。

そしてこの溺れて死んでしまった青年の父親こそが、「行きずりの人」を書いた老人・スティーブンだったのです。

彼の手元には、息子が撮影したキャサリンの乱れた姿の写真が何枚もありました。

この残された写真こそが、キャサリンが20年隠し続けた過去の証明品でした。

そして何とか過去を隠し続けようとするキャサリンに憤りを感じた彼は、ついにキャサリンの夫・ロバートのもとへ「行きずりの人」と一緒に証拠となる写真を送り付けるのでした。

そして彼の復讐の手は、キャサリンの一人息子であるニコラスにまで伸びようとしていました。

果たして、すべての秘密が明らかになったとき、キャサリン、そしてスティーブンは一体どうなってしまうのか。

まだ読んでいない方は、ぜひご自分の目でお確かめください。

ここからは「夏の沈黙」を読んだ私のレビューを書かせていただきます。

人の願望は見えている世界も歪めてしまう

人間は願望の前では弱く、目に見えている現実さえ願望通りに歪めてしまいます。

自分の望み通りの世界を見続けたいがために、事実を曲げてまで自分を守ってしまうものです。

今作品ではこうした人間の弱さがいくつもの悲劇を巻き起こしてしまいます。

わたし達も、自分の好きな人や身近な人は、たとえ欠点があったとしても、どうしても好意的にとらえてしまいます。

特にすでに死んでしまった人なら、なおさらです。

思い出は美化される、というのは、本当に上手な表現だと痛感しますね。

しかしあまりに歪められた世界で生き続けていると、必ず邪魔となる他者が現れるものです。

そのとき自分の過ちを認めることができるのか、そして正しい世界を認めることができるのかが、人間としての尊厳なのかもしれません。

読者の感情を操る作者の腕前に脱帽

今作品は場面が一転二転するたびに、読者が感情移入する人物が変わっていきます。

はじめはキャサリンに同情していたはずなのに、気が付けば読者はスティーブンの味方に。

そしてロバートが事実を知ったときには、キャサリンを敵のごとく憎んでいるはずです。

また一人息子のニコラスに対しても、最初はダラダラしてイラついてしまいますが、読み進めていくと、同情とはまた違った愛しさを抱いていました。

10ページめくるたびに、作者の思い通りに私たち読者の感情は揺り動かされてしまいます。

この構成の巧妙さ、そして緻密な心理描写はとても新人作家とは思えません。

現在作者のルネ・ライトさんは、2作目の長編小説を執筆中ということで、世界中がその新作に注目を集めています。

数年後には売れっ子作家の仲間入りを果たしているかもしれません。今から注目すべきミステリー作家の1人だと思いますよ。

ということで、今回は久々に一気読みをしてしまった「夏の沈黙」のあらすじとレビューを紹介させていただきました。

普段海外ミステリーを読まない方でも、読みやすい作品なのでぜひ手に取ってみてくださいね!

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