その女アレックス

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フランスのミステリー作家、ピエール・ルメートルの「その女アレックス」は、フランスだけでなく世界のミステリーファンに衝撃を与えました。

日本でも文庫版が発表されると、「このミステリーがすごい」で海外小説部門1位に輝くなど、海外ミステリーの賞レースを独占。

プロの作家、書評家が絶賛した大胆な構成は、ミステリーファンなら必見です。

今回は記事の前半では、まだ「その女アレックス」を読んでないという方のために、途中までのあらすじとおすすめポイントをご紹介。

後半からはネタバレありで、その女アレックスの書評を紹介していきます。

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その女アレックスのあらすじ

物語は一人の女性誘拐事件から始まる

非常勤の看護師として生計を立てるアレックスは、誰もが魅力的と思わずにいられない美貌の持ち主。

彼女は日ごろからウィッグをかぶって雰囲気を変えたり、突然引っ越しをして環境を変えてみたりと、今とは別の人生を歩むことを楽しみとしていた。

そんなアレックスはある日の帰り道、目の前に停まった白いバンから出てきた男に殴られ、誘拐されてしまう。

彼女は車中に転がされながら、強く願った。

「まだ死にたくない!私にはまだやることがあるのに…!」

警部カミーユ・ヴェルーヴェンの登場

パリ警視庁では、犯罪捜査部班長のカミーユ・ヴェルーヴェンが、誘拐事件の捜査を担当することとなった。

彼は4年前に自分の妻が誘拐され、犯人に殺されたことで心に深い傷を負っていた。

そんな彼を再起させるためにも、友人であり上司でもあるジャン・ル・グエンは、無理やり彼に事件を担当させた。

カミーユのもとに付いたのは、御曹司の息子で切れ者のルイ・マリアーニだった。

彼は4年前の事件でも共に戦った戦友だった。

しかし事件を捜査しようにも、誘拐事件の目撃者がいるだけで、犯人も被害者の皆目分からない状況だった…。

アレックスはなぜ誘拐された?

アレックスが目を覚ますと、そこは見覚えのない倉庫のような場所だった。

手足をガムテープで縛られたアレックスは、身動きができないまま恐怖におびえる。

やがて姿を現した男は、アレックスの服を脱がせ裸にさせる。

しかし男がアレックスの体に触れることはない。

アレックスは自分が男にさらわれた理由も分からないまま、絶望と戦わなくてはならなかった。

捜査を続けるカミーユとルイ

カミーユとルイは地道な聞き込み捜査を続け、バスの運転手から被害者であろう女性が美しかったと証言を得る。

バスに乗ろうとした彼女は、途中で気が変わったのかバスを降り、一人で夜道を歩いて行ったらしい。

しかし被害者の女性の存在は確認できたものの、犯人を追跡する手掛かりは全くなかった。

決死に脱出を試みるアレックス

その頃、アレックスは男の隙をついて脱出を試みていた。

しかし結果は失敗、彼女は捕まり何度も暴行を受ける。

そしてアレックスは男に格子状の木箱で入れと命じられる。

「なぜ私なの?」と問うアレックスに、男は「お前がくたばるのを見たいからだ」と冷酷に言い放った。

ようやく手がかりを掴むカミーユ

犯人の行動を洗いなおしたカミーユは、犯人のバンが映った防犯カメラを見つける。

防犯カメラには白塗りされたバンの下に、うっすらと文字が浮き出ているのが確認できた。

早速鑑識へ回すカミーユ、ようやく誘拐犯の足取りがつかめたことに安堵を覚え、自分が昔のように捜査に熱中していることに気づく。

檻に閉じ込められるアレックス

木箱に入ったアレックスは、箱ごとロープで宙に吊るされてしまった。

身動きのできない彼女を満足げに携帯電話で撮影する男。

アレックスは自分が箱に入れられたのではなく、檻に閉じ込められたことを理解する。

昔の仲間が集まったカミーユ班

人手不足を感じたカミーユは、上司のル・グエンへ応援を要請する。

そしてやってきたのはアルマンという9年以上連れ添った仲間だった。

アルマンは極端な吝嗇化で、倹約のためにタバコから何まで人から貰うような男だった。

しかし仕事に対する熱意は確かで、指示を出せば必ず完遂してくれる男だった。

こうして4年前の事件以来、久々にカミーユ班は顔を揃えたのだった。

4年前に警察を追われてしまった一人の男を除いて―。

衰弱していくアレックス

身動きの取れない檻に閉じ込められたアレックスは、だんだんと衰弱していた。

その様子を黙々と携帯で撮影する男。

時折差し出される少量の水と食料で命をつなぎながら、アレックスは男に問う。

「なぜ私なの?」

男は「それは、お前だからだ」と言い放ち、アレックスを再び放置するのであった。

捜査に一筋の光は見えたが…?

以前として犯人も被害者も分からないまま10日が経ってしまった。

被害者の生存は絶望的だと思いながらも、黙々と捜査を続けるカミーユ。

女には友達も親も兄弟もいないのだろうか…。

そんなカミーユのもとに、犯人が分かったから至急署に戻れと連絡が入る。

死が近づくアレックス

意識が朦朧とする中、アレックスは自分の体を傷つけることで何とか正気を保とうとしていた。

これまでの自分の人生を考え、誰も自分を探してはくれないと絶望に暮れるアレックス。

そんな彼女のもとへ、男が再び差し入れを持ってくる。

しかし今回の差し入れは今までとは違う―、カゴの中に入っていたのは、今にもアレックスを食いちぎろうとする、丸々と太った凶暴なネズミたちだった。

ということで、今回ご紹介するあらすじはここまでです

「その女アレックス」はここから誰も想像できない展開が続きます。

続きが気になるという方は、ぜひ本を買って一気読みしてください。

ここからはまだまだ買う気にならないという方のために、おすすめポイントをご紹介していきます。

ミステリーファンなら騙される大胆な構成が快感

ある程度ミステリーを読んでいる方なら、ある程度まで作品が進むと物語の構成は何となく分かってくるものです。

館で人が殺されたら、事件はまだまだ続くだろうなという予測だったり、犯人を追う刑事と妻が喧嘩をすれば、妻が事件に巻き込まれるだろうなという予測だったり…。

しかしその女アレックスでは、そういったミステリーファンの常識は全く通用しません。

読み進めていくうちに作り上げた輪郭は、思いもよらぬ展開に何度も土台から崩されていきます。

近年、国内ミステリーではラスト数ページでどんでん返しを起こす作品が好まれていますが、その女アレックスはラスト数ページどころか、100ページ以降はずっとどんでん返しの連続です(笑)

これほど読者を振り回す作品は、なかなかお目にかかることはできませんよ。

そしてただ読者の予想を裏切るだけでなく、物語は一つの終着点に向けて、見事に収束していきます。

読み終われば、凄い小説を読んでしまった…、人におすすめしたくなること間違いなしの一冊です。

実はシリーズの2作目なんです

実は「この女アレックス」は、カミーユ・ヴェルーヴェンシリーズでは2作目にあたる作品なんです。

1作目は「悲しみのイレーヌ」、ただこのあらすじでもそうですが、「この女アレックス」は、「悲しみのイレーヌ」のネタバレが満載なんです(笑)

しかも日本語の翻訳版は「その女アレックス」が先に発売されたので、多くの日本人はネタバレした状態で「悲しみのイレーヌ」を読むこととなりました。まさに悲しみ…。

まだ「その女アレックス」を読んでいないという方は、ぜひ「悲しみのイレーヌ」から読んでくださいね。

カミーユが必死に誘拐犯を追う姿は、胸を打つものがありますね。

ここからはネタバレ有でもう少し詳しく、その女アレックスの魅力を紹介していきます。

まだ読んでいない方はここから下は絶対に除かないでくださいね!

「その女アレックス」ネタバレ有の書評

被害者=犯人=被害者の構図がお見事

アレックスは第一部では誘拐されてしまった可哀想な被害者、第二部では男たちを惨殺していく犯人、そして第三部では再び可哀想な被害者と立場を二転三転させます。

このあたりが誘拐された女性=可哀想な被害者、という固定観念を持つミステリーファンたちを驚愕させたわけですね。

しかしこの構図、2012年に発表され映画化もされた「ゴーンガール」に少し似ていますね。

わたし達はどうしても被害者を見ると、何も罪のない善良な市民を思い描いてしまいます。

現実世界でも、事件の被害者は聖人のように語られ、悪い噂を立てることはタブー視されています。

最近のミステリー業界では、このタブーを打ち破る動きが盛んになっているようですね。

ただ「その女アレックス」はただタブーを破るだけでなく、一歩先の衝撃まで用意されていました。

中盤で残虐な殺人鬼としての一面を見せながら、物語の最後では再び可哀想な被害者へと舞い戻る。

この構図は見事としか言えません。

カミーユたちの最後の決断に痺れる

この小説の主人公であるカミーユは警察官なので、法を守るのが一番の仕事です。

しかし法を守ったからといって、正義が守られるわけではありません。

アレックスは最後の復讐として、最も憎むべき相手に最後の罠を仕掛けて死にます。

ただカミーユもプロの警部、アレックスの思惑は捜査の中でどんどん明らかになっていきます。

そしてすべてを理解したカミーユたちが最後に下した決断こそが、この作品最後のインパクトとなる感動を生むんです。

アレックスはすべてを成し遂げました、彼女は可哀想な被害者でしたが、決して弱い女性ではありませんでした。

そんなアレックスを見て、イレーヌと母の死を乗り越えていくカミーユ。

最初の100ページを読んだだけでは、絶対に予想できない結末をぜひ味わってみてください。

ということで、今回は世界中に大きな衝撃をもたらした傑作「その女アレックス」のあらすじとレビューをご紹介しました。

カミーユ・ヴェルーヴェンシリーズは全三部作で、「その女アレックス」の続編である「傷だらけのカミーユ」で一旦シリーズは終了します。

どの作品も一級品のミステリーなので、未読の方はぜひ読んでみてくださいね!

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