「絶叫」のあらすじと感想【ネタバレ】不幸な女の半生と驚愕のラスト

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あなたは「不幸な女性」と訊いて、どんな女性を思い浮かべますか?

今、わたしが訊かれたとするならば、間違いなく「絶叫」の主人公・鈴木陽子を挙げるでしょう。

この作品は私に現代人の不幸とは何なのか、目をそむけたくなるほどのリアルを見せつけてくれました。

それでいて不思議な爽快感を覚えてしまったのは、私だけでしょうか?

ページをめくるたびに転落していく陽子の人生、そして狂気の道へと突き進んでいく彼女の最後を追うのに必死で、読み始めてから一気に完読してしまいました。

ということで、今回は本屋でも見かけることが多くなった話題作・絶叫のあらすじや感想を書いていこうと思います。

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絶叫のあらすじ

マンションで孤独死体となって発見された女性の名は、鈴木陽子。刑事の綾乃は彼女の足跡を追うほどにその壮絶な半生を知る。平凡な人生を送るはずが、無縁社会、ブラック企業、そしてより深い闇の世界へ…。辿り着いた先に待ち受ける予測不能の真実とは!?ミステリー、社会派サスペンス、エンタテインメント。小説の魅力を存分に注ぎ込み、さらなる高みに到達した衝撃作!

今作品はマンションの一室で、女性の孤独死体が見つかるところから始まります。

女の死体は飼っていた猫たちに食い荒らされており、遺体の身元も分からなくなっていました。

そこで刑事の綾乃はマンションの契約者の名前から戸籍を辿っていき、彼女の正体を探ることになります。

果たして「鈴木陽子」とは一体どんな人物だったのか、そしてなぜこの部屋で一人孤独死することになったのか。

刑事綾乃が彼女の正体に迫るパートと、「―陽子」と彼女に語り掛ける謎の人物の視点を織り交ぜながら、読者は鈴木陽子の半生を辿っていくことになります。

ということで、ここからはもう少し作品の内容を踏み込んで紹介していくので、ネタバレが嫌な方は注意してくださいね。

鈴木陽子の幼少期について

陽子は大手企業に勤める父親と、頭脳明晰で美しい容姿をもつ母親の間に生まれました。

しかし陽子の顔は平凡で、顔立ちは整っているものの、綺麗とは言い難い容姿でした。

加えて頭脳の方もいたって平均的で、母親の愛情はつねに天才的な頭脳を持って生まれた弟へと注がれるのでした。

しかし陽子の弟・純は現代でいうアスペルガー症候群に分類されるタイプで、人付き合いはあまり上手ではありません。

結果的に弟の純は中学生の頃に、自らトラックに身を投げて自殺してしまいました。

そこから更に母親は亡き弟の純だけを愛するようになり、陽子との親子関係は希薄なものになっていくのでした。

過去に彼女は結婚をしていた

鈴木陽子の戸籍を調べてみると、彼女が過去に離籍をしたばかりであることが分かります。

おそらく彼女は一度結婚をして親元の籍を抜け、さらに離婚をして自分だけの戸籍を取得したのだろうと綾乃は推理し、彼女が結婚していた痕跡を辿っていきます。

綾乃は以前陽子が住んでいたというアパートも訪ねてみますが、特に彼女が猫好きだったことや、前の夫の存在を確かめることはできませんでした。

果たして鈴木陽子の結婚生活とはどのようなものだったのか、全く実情を掴めずにいた綾乃は、この事件に何かしら違和感を覚えるのでした。

陽子の初恋と自立

陽子は中学生のころ、美実部の先輩だった山崎という男と恋に落ちます。

漫画家になりたいと夢を語る彼は、親の都合があり引っ越すことになってしまいました。

その後、陽子は高校を卒業したのち、地元の小さな会社で事務員として働き始めます。

しかし彼女にはいつか東京に行って暮らしたいという淡い夢がありました。居場所がないと感じる地元を離れて、新しい自立した生活を送りたいと考えていたのです。

そんなある日、コンビニでアルバイトをしている山崎と運命的な再会した陽子は、彼の漫画の雑誌デビューが決まったのをきっかけに、結婚をして上京することになります。

しかし結婚生活は長く続かず、山崎の浮気相手が妊娠したことを原因に、二人はわずか3年足らずで別れることになってしまいました。

東京で一人取り残された陽子は、非正規社員としてコールセンターで働きながら、自立した生活を目指すようになるのでした。

鈴木陽子と結婚していた3人の男性たち

綾乃が捜査を進めていく中で、鈴木陽子は過去に3人の男性と結婚していたことが分かります。

そして3人ともすでに事故で亡くなっており、前の夫が死んだ半年後には再婚していたことが明らかになるのです。

元々は女性の孤独死と思われた一件でしたが、何かしら事件に関係が高いとして本格的に捜査が始まることになります。

果たして彼女は過去の夫たちの死にどのように関わっているのか。

陽子の過去の仕事を調べていくうちに、彼女が過去に保険会社の外交員をやっていたことが明らかになります。

彼女は生命保険について、ある程度専門的な知識を持っていたのです。

保険のセールスとして働いていた陽子の転落

非正規社員として働いていた陽子は、このままではいくら経ってもまともな生活を送ることはできないと、保険のセールスレディへと転職します。

そこで知り合いのコネや体を使ってがむしゃらに勧誘をつづけた陽子は、月収50万円を超える稼ぎを手に入れるのです。

また上司の会社員とも関係がスタートし、陽子は人生の絶頂ともいえる幸福を感じていました。

しかしそんな日々も長くは続かず、顧客が取れなくなった陽子は、職場を追われ再び明日の生活も危ない身分へと落ちてしまいました。

元ホストのヒモに暴行を受けながら、デリヘル嬢として働いていた彼女は、ある日突然男たちに襲われ、レイプされ殺されかけます。

命の危機に直面した陽子は、そこでこれまでの人生を振り返り、一種の覚悟を決めるのでした。

彼女たちを襲ったリーダー格の男へと、「殺してほしい人がいる」と相談を持ちかけるのです。

こうして陽子は後戻りできない、殺人という悪事へと手を染めることなるのでした。

ということで、ここから物語はさらに急展開を見せ、読者の想像もしない結末へと進んでいきます。

結末が気になる方はぜひ本を買って、自分の目で結末を確かめてみてください。

ここからは「絶叫」の解説や感想などを書いていこうと思います。

作者が書きたかった棄民とは?

作中では社会から捨てられた人々を「棄民」という言葉で表現します。

仕事も家も失くしてしまったホームレスや、ヤクザになるしかなかった人たちも棄民というわけです。

そして陽子もまた国から見捨てられてしまった棄民の1人でした。

平凡に生きていたはずの彼女は、いつの間にか転落していき、デリヘル嬢として働かなければならないところまで追い詰められます。

作品を読んでもらえれば分かりますが、陽子自身は特に能力が劣っていたり、容姿が醜かったりしたわけではありません。

世間から見て平凡な女性に生まれたにも関わらず、どこにも居場所のない棄民になってしまいました。

これは現実世界でも十分に起きうることだな、と思います。

現代に生きるわたし達はどれだけ懸命に生きたとしても、運が悪ければ簡単に貧困層へと転落してしまいます。

そして一度貧困の沼にはまってしまえれば、抜け出すことは容易ではありません。

「絶叫」が多くの人々に恐怖や驚きだけでなく共感も与えているのは、現代人の不安定さを克明に描いているからなのかもしれません。

名前と顔を変えた陽子はどこへ…?

物語のクライマックスで、陽子はデリヘル時代に知り合った女を騙して殺し、自分が死んだように警察に見せかけることに成功しました。

その後、殺した女の身分になり替わった彼女は、整形手術を受けて新しい人生を歩み始めます。

それでは、名前と顔を変えた陽子はどこへ行ったのでしょうか?

ちゃんと読みこんだ読者の方なら分かると思いますが、実は綾乃が捜査の途中で立ち寄っていた喫茶店の店長こそが、顔と名前を変えてしまった陽子だったんですね。

彼女は売られてしまった自分の家の土地を取り戻し、喫茶店を開いて人々に居場所を与えることを生きがいとしていたのです。

喫茶店が登場したシーンから、しっかりと伏線が貼られているので、気が付かなかった方はぜひもう一度読み返してみてくださいね。

このように絶叫では細かなエピソードが、未来への伏線となっており、ミステリー作品としても非常に優秀な作品です。

急いで続きを読みたくなる気持ちも分かりますが、伏線を見落とさないようにじっくり読みこんでくださいね。

ということで、今回は葉真中顕の「絶叫」のあらすじと感想を紹介しました。

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