若者を中心に絶大な人気を誇る、今最も注目を集める作家・朝井リョウさん。
彼の作品は驚くほど、若者の心情や世界観をリアルに描いていて、「あれ、これって自分のこと?」と思ってしまうくらい、強く共感を覚える方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな朝井リョウさんのファンが選んだおすすめ作品をご紹介!
それぞれ簡単なあらすじも説明しているので、興味が湧いた方はぜひ読んでくださいね!
9位 星やどりの声
星になったお父さんが残してくれたもの―喫茶店、ビーフシチュー、星型の天窓、絆、葛藤―そして奇跡。東京ではない海の見える町。三男三女母ひとりの早坂家は、純喫茶「星やどり」を営んでいた。家族それぞれが、悩みや葛藤を抱えながらも、母の作るビーフシチューのやさしい香りに包まれた、おだやかな毎日を過ごしていたが…。
喫茶店を経営している家族の物語。
父親を病気で亡くした、三男三女、母ひとりの家族が、悩みながらも現実を受け入れていこうとする希望あふれるストーリーです。
六人兄弟それぞれの視点で語られていく構成となっており、いずれのお話も家族の抱える切なさと温かさで溢れていて、「星やどり」という喫茶店の名前がとても素敵に思えました。
最も印象に残っているのは、高校三年生の双子、るりと小春の話です。
生前の父親との会話が、少女たちのアイデンティティーに結びついていく過程が、切なくて忘れられません。
8位 少女は卒業しない
今日、わたしは「さよなら」をする。図書館の優しい先生と、退学してしまった幼馴染と、生徒会の先輩と、部内公認の彼氏と、自分だけが知っていた歌声と、たった一人の友達と、そして、胸に詰まったままの、この想いと―。別の高校との合併で、翌日には校舎が取り壊される地方の高校、最後の卒業式の一日を、七人の少女の視点から描く。青春のすべてを詰め込んだ、珠玉の連作短編集。
廃校の決まった高校が迎える最後の卒業式を、7人の女子生徒の視線から語ります。
おもしろいというよりも、ただただ「綺麗」と感じる物語でした。
女子高生の夢とか、恋愛とか、出会いとか、別れとか、十代の繊細な感性が敏感にとらえるものを、丁寧に描いた作品です。
週末にしっとりと読むような小説でした。
7位 桐島、部活やめるってよ
田舎の県立高校。バレー部の頼れるキャプテン・桐島が、理由も告げずに突然部活をやめた。そこから、周囲の高校生たちの学校生活に小さな波紋が広がっていく。バレー部の補欠・風助、ブラスバンド部・亜矢、映画部・涼也、ソフト部・実果、野球部ユーレイ部員・宏樹。部活も校内での立場も全く違う5人それぞれに起こった変化とは…?瑞々しい筆致で描かれる、17歳のリアルな青春群像。第22回小説すばる新人賞受賞作。
映画化されたり、タイトルがもじられたりと話題になった作品だと思います。
桐島の退部の影響が連鎖して、野球部、男子バレーボール部、ブラスバンド、ソフトボール部、映画部などさまざまな部活の部員を巻き込み波紋が広がる・・・・・・というストーリー。
ある章で主人公だった人物が、次の章では完全に外部から描写される、という構成も面白いです。
同じ年代の男女が大量に集められる「教室」という、特殊な閉鎖空間で生じる、言葉にするのも困難なあのひりつく感じ。
朝井さんは、それをなんて冷徹に描写するのだろうと思いました。
6位 スペードの3
有名劇団のかつてのスター“つかさ様”のファンクラブ「ファミリア」を束ねる美知代。ところがある時、ファミリアの均衡を乱す者が現れる。つかさ様似の華やかな彼女は昔の同級生。なぜ。過去が呼び出され、思いがけない現実が押し寄せる。息詰まる今を乗り越える切り札はどこに。屈折と希望を描いた連作集。
美知代、むつ美、つかさという3人の女性がそれぞれ主人公として描かれる、「スペードの3」、「ハートの2」、「ダイヤのエース」の3編からなる短編小説集。
女性の中を流れる優越感や劣等感が、鋭い感性で観察されて描かれており、読んでいてチクチク棘が刺さる感覚でした。
他者からぶつけられる評価の中で生きていくこと。
その苦しさの中で足掻きながら、3人の女性が変わるために一歩進もうとする、そんなお話です。
「私は、私のために、よりよくなりたい」
むつ美のその言葉に思わずはっとさせられました。
5位 もういちど生まれる
彼氏がいるのに、別の人にも好意を寄せられている汐梨。バイトを次々と替える翔多。絵を描きながら母を想う新。美人の姉が大嫌いな双子の妹・梢。才能に限界を感じながらもダンスを続ける遙。みんな、恥ずかしいプライドやこみ上げる焦りを抱えながら、一歩踏み出そうとしている。若者だけが感受できる世界の輝きに満ちた、爽快な青春小説。
二十歳前後の若者を描く短編5作品をおさめた、連作短編集です。
朝井さんの小説を読んでいると、なんてことないかのように書かれた、何気ない一文が深く突き刺さるということがあります。
『もういちど生まれる』は登場人物たちと年齢が近かったせいか、各短編の文章に内面をえぐられながら読みました。
中でも、3作品目の「僕は魔法が使えない」でナツ先輩が語る、「伝わるのかどうか」「伝わったらいいな」という話がとても良かったです。
4位 時をかけるゆとり
就活生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。この初エッセイ集では、天与の観察眼を駆使し、上京の日々、バイト、夏休み、就活そして社会人生活について綴る。「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見た、切なさとおかしみが炸裂する23編。『学生時代にやらなくてもいい20のこと』改題。”圧倒的に無意味な読書体験”があなたを待っている!?
『学生時代にやらなくてもいい20のこと』を改題し、3編が追加されたエッセイ集。
思わずクスリとしてしまうエピソードの連続に、ニヤニヤが止まりません。
小説の文章から見える朝井さんとはまた違う一面に魅力を感じました。
小説を読む体力・気力のないときにおすすめです。
ゆとり世代のあなたにも、ゆとり世代ではないあなたにも、手に取っていただきたい一冊です。
3位 チア男子!!
大学1年生の晴希は、道場の長男として幼い頃から柔道を続けてきた。だが、負けなしの姉と比べて自分の限界を悟っていた晴希は、怪我をきっかけに柔道部を退部する。同時期に部をやめた幼なじみの一馬に誘われ、大学チア初の男子チームを結成することになるが、集まってきたのは個性的すぎるメンバーで…。チアリーディングに青春をかける男子たちの、笑いと汗と涙の感動ストーリー。
こちらは男子大学生たちがチアリーディングに挑戦するザ・青春小説で、テレビアニメ化もされました。
男子大学生が、葛藤や悩みを抱えながら技に挑戦し、チームになっていくストーリーです。
今のところ、朝井さんの小説の中で一番明るい作品かもしれません。
チアリーディングはほとんど知りませんでしたが、動画を見てみたところ、人間技とは思えない技、技、技の連続に驚かされました。
クライマックスが本当に良かったです。
毎日の練習で、メンバーが想いをぶつけて綴ったノート。
そこに語られる各々の想いが見えたとき、この作品の良さがぐっと跳ね上がりました。
2位 何者
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから―。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて…。直木賞受賞作。
『何者』は直木賞を受賞し、映画化や舞台化もされて話題になりました。
就職活動に取り組む5人の大学生の思考や行動を辿りながら、選別されていく過程において、若者の内面でのた打ち回る自意識を描き出します。
就職活動を経験したゆとり世代には特に、理解できる場面や共感できる台詞がたくさんあると思います。
最後の場面で隠されていたピースがストンとはまるような瞬間は、圧巻です。
どうか最後まで読んでいただきたい一冊です。
1位 武道館
本当に、私たちが幸せになることを望んでる?恋愛禁止、スルースキル、炎上、特典商法、握手会、卒業…発生し、あっという間に市民権を得たアイドルを取りまく言葉たち。それらを突き詰めるうちに見えてくるものとは―。「現代のアイドル」を見つめつづけてきた著者が、満を持して放つ傑作長編。
主人公は、女性アイドルグループ「NEXT YOU」として活躍する愛子。
NEXT YOUは、武道館での単独ライブ実現を目指して地道に活動を続け、人気、実績とともに伸ばしていきます。
そんな中で愛子は、幼馴染・大地への恋心を自覚し、歌って踊ることが大好きな自分と、大地のことが大好きな自分は、両立しないのかと苦悩するようになります。
アイドルに向けられる矛盾する要求と、厳しい批判。
恋愛は禁止、太れば劣化呼ばわりされ、女優やクリエイティブな仕事をすれば非難され、反論すればスルースキルを求められる。
現代を生きていれば、本作に描かれているそんな風潮が理解できると思います。
この『武道館』では、朝井リョウ作品における冷静さ、鋭さはもちろんのこと、それ以上に優しさが溢れていて良い物語だと思いました。
愛子の、大切な存在を大切にしたいという気持ちが終始伝わってきて、誰かの幸せを喜べることの尊さを感じました。
ということで、いかがだったでしょうか。
今回は鋭い感性で若者の心を鷲掴みにする、朝井リョウさんのおすすめ作品を紹介しました。
最近朝井リョウ作品にハマってきたあなた!まだ未読の作品があればぜひ読んでみてくださいね!