宮部みゆきさんといえば、1987年のデビュー以来、「火車」「模倣犯」「ソロモンの偽証」と、たくさんのヒット作を生み出した日本を代表する作家です。
またミステリー以外の分野でも、映画化もされた「ブレイブストーリー」や、ゲーム化された「ICO」など、様々なジャンル・メディアで活躍されています。
しかし私個人としては、やっぱりミステリーを書いている宮部みゆきさんが好きです!
ということで、今回はミステリーに絞って、宮部みゆき作品のおすすめ10選を紹介しようと思います。
10位 長い長い殺人
轢き逃げは、じつは惨殺事件だった。被害者は森元隆一。事情聴取を始めた刑事は、森元の妻・法子に不審を持つ。夫を轢いた人物はどうなったのか、一度もきこうとしないのだ。隆一には八千万円の生命保険がかけられていた。しかし、受取人の法子には完璧なアリバイが…。刑事の財布、探偵の財布、死者の財布―。“十の財布”が語る事件の裏に、やがて底知れぬ悪意の影が。
いきなり財布が語り部という変わり種の作品ですが、面白さは保証します。様々な人物の視点から事件の真相に迫っていく手法は、宮部みゆきさんのお家芸ですね。
今作品でも財布の持ち主が転々とすることで、異なる視点から事件の真相がどんどん明らかになっていきます。
個人的にはタイトルで損をしている作品かなと思います(笑)
ただ容疑者が転々としすぎたことで、真犯人が明らかになってもそこまで驚きはありませんでした。
結末というよりも、作中の展開を楽しむべき一冊だと思います。
9位 龍は眠る
嵐の晩だった。雑誌記者の高坂昭吾は、車で東京に向かう道すがら、道端で自転車をパンクさせ、立ち往生していた少年を拾った。何となく不思議なところがあるその少年、稲村慎司は言った。「僕は超常能力者なんだ」。その言葉を証明するかのように、二人が走行中に遭遇した死亡事故の真相を語り始めた。それが全ての始まりだったのだ…宮部みゆきのブロックバスター待望の文庫化。
超能力…というか少し不思議な能力を持った少年のお話。
触ったものの記憶を探ることができる能力って、便利なように見えて辛いことが結構多そうですよね。
一万円札とか色んな人のドラマが詰まってそうで、なかなか触れないですね(笑)基本的にクレジットカードで決済する人間になりそうです。
読み終わったあとに、これから待つ少年の運命に胸がしめつけられる、少し切ないミステリーです。
意外とファンの間では賛否両論分かれているらしいですが(特にラスト)、私は純粋に楽しむことができましたよ。
8位 楽園
未曾有の連続誘拐殺人事件(「模倣犯」事件)から9年。取材者として肉薄した前畑滋子は、未だ事件のダメージから立ち直れずにいた。そこに舞い込んだ、女性からの奇妙な依頼。12歳で亡くした息子、等が“超能力”を有していたのか、真実を知りたい、というのだ。かくして滋子の眼前に、16年前の少女殺人事件の光景が立ち現れた。
大ヒット作模倣犯の続編?に位置する作品。
模倣犯で網川浩一の正体を暴いた前畑滋子が、新たに殺人事件のルポを書くために取材をはじめます。
模倣犯での一連の騒動が終わってから、前畑家たちの生活はどうなってしまったのか。凶悪事件が周囲へまき散らす影響の強さというのも実感しました。
さすがに模倣犯と並ぶ傑作!とは言いませんが、ちらほら前作の登場人物も出てくるので、模倣犯ファンの方にはおすすめです。
網川浩一の今後も少し語られますが、あくまでおまけとしての扱いなので、過度に期待しすぎてはだめですよ(笑)
7位 ソロモンの偽証
クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった―。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。
映画化もされ話題になったソロモンの偽証は、「勇気」の大切さを説いた作品です。
なぜ級友は死ななくてはならなかったのか、作中で悲劇は続きますが、主人公たちは決して勇気を失いません。
リアルな犯罪ミステリーを書いてきた宮部みゆきと、ブレイブストーリーなど勇気をテーマにファンタジーを書いてきた宮部みゆきの、集大成ともいえる小説だと勝手に思っています。
映画版は途中少しだれてしまう部分もあるので、個人的には原作をおすすめしたいです。
6位 R.P.G.
建築中の一軒家の中で殺人事件が発生、所田良介が刺殺された。捜査が進むにつれ、所田がネット上で「お父さん」を名乗り、家族ごっこをしていた痕跡がみつかる。武上らはある結論を導き出し、ある“計画”を実行することを決意する。所田の娘・一美がマジックミラー越しに見守る中、「カズミ」「ミノル」「お母さん」の取調べが始まる。犯人は誰なのか、そして“計画”とは…。
こちらも「模倣犯」に登場した武上や、「クロスファイア」に登場した石津女性刑事も登場します。
ミステリーとしてはアンフェアな部分はありますが、社会に潜む不気味な闇を描く眼はさすがです。
一応どんでん返しものの作品ですが、普段からミステリー小説に慣れ親しんでいる人なら、結末の前にオチが分かってしまうかもしれませんね。
ただ他の作品からのクロスオーバーなど、宮部みゆきファンにはぜひおすすめしたい一冊です。
5位 小暮写眞館
家族とともに古い写眞館付き住居に引っ越ししてきた高校生の花菱英一。変わった新居に戸惑う彼に、一枚の写真が持ち込まれる。それはあり得ない場所に女性の顔が浮かぶ心霊写真だった。不動産屋の事務員、垣本順子に見せると「幽霊」は泣いていると言う。謎を解くことになった英一は。待望の現代ミステリー。
厳密にはミステリー小説ではないですが、ミステリー的嗜好も見受けられたので、今回のランキングにも入れさせていただきました。
小暮写眞館へ持ち込まれた一枚の心霊写真から、主人公の英一は様々な事件へ巻き込まれていきます。
家族・恋愛・友情を通して、英一が成長していく姿には胸を打たれます。
凶悪犯罪とは縁が遠い、心が温まる青春ミステリーを読みたい方におすすめです。
4位 火車
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
山本周五郎賞を受賞し、このミステリーがすごい!のベスト・オブ・ベストに選ばれるなど、ミステリー好きなら必読の傑作。
消費者金融問題へ警鐘を鳴らし、借金の恐ろしさも克明に描かれています。
果たして関根彰子へと成りすまして女性とは何者なのか。そしてなぜ彼女は他人になりすまそうとするのか。
ページをめくるたび、謎の女を一歩ずつ追い詰めていく、背筋がゾクゾクするようなあの感覚。この小説でしか味わえない面白さをぜひ皆さん体験してみてください。
3位 我らが隣人の犯罪
僕は三田村誠。中学1年。父と母そして妹の智子の4人家族だ。僕たちは念願のタウンハウスに引越したのだが、隣家の女性が室内で飼っているスピッツ・ミリーの鳴き声に終日悩まされることになった。僕と智子は、家によく遊びに来る毅彦おじさんと組み、ミリーを“誘拐”したのだが…。表題作以下5篇収録。
宮部みゆきさんには珍しいミステリー短編集です。
表題でもある我らが隣人の犯罪は、さすがのクオリティで、デビュー作とは思えません。
個人的には3編目の「サボテンの花」 がお気に入りでした。
背筋が凍るような恐ろしい事件も、心温まる不思議な事件も書き分けてしまう。デビュー作でありながら、作者の魅力が詰まった一冊です。
2位 理由
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して――なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか? いったい彼女は何者なのか? 謎を解く鍵は、カード社会の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。山本周五郎賞に輝いたミステリー史に残る傑作。
高層マンションで起きた一家惨殺事件は、真相を追うごとに思いもよらぬ展開を見せます。
なぜ彼らはあの部屋で死んでいたのか―、現代社会の知られざる闇を描いた傑作です。
この作品の犯人のように、宮部作品に出てくる凶悪犯は、心のどこかに大きな穴が空いた人間であることが多いですね。
家族の絆とは何なのか、読者に問う社会派ミステリーです。
1位 模倣犯
墨田区・大川公園で若い女性の右腕とハンドバッグが発見された。やがてバッグの持主は、三ヵ月前に失踪した古川鞠子と判明するが、「犯人」は「右腕は鞠子のものじゃない」という電話をテレビ局にかけたうえ、鞠子の祖父・有馬義男にも接触をはかった。ほどなく鞠子は白骨死体となって見つかった―。未曾有の連続誘拐殺人事件を重層的に描いた現代ミステリの金字塔、いよいよ開幕。
映画化もされ大きな社会現象にもなった問題作です。
連続誘拐殺人事件に翻弄される人々と、事件を起こした犯人たちの狂気。
実際のルポを呼んでいるかのような重厚な物語は、一度読み始めると手が止まりません。
文庫本で全5札とボリュームが凄いので、連休など使って一気に読みたい小説ですね。
タイトルがどうして模倣犯なのか、ラストの展開は鳥肌ものですよ!
ということで、今回は宮部みゆき作品の中でも、ミステリー系統の作品に絞って、個人的に選ぶおすすめ作品BEST10をご紹介しました。
映像化された作品も多いですが、原作には違った良さも詰まっているので、ぜひ読んでみて欲しいと思います。
思いっきり小説の世界に没頭したいときには、ぴったりの作家さんですよ!